「本好きの下剋上・司書になるためには手段を選んでいられません」を読みました。すごく面白くて楽しくて大好きなので紹介します。ネタバレは無しです。
異世界系って現実逃避でしょ?って思って興味なかったけど、こんなに楽しいと思いませんでした。読み始めると止まらない。自分じゃ出来ない事をどんどん叶えていく姿はスカッとして楽しいです。一度読みだしたら先が気になって止まらなくなりますよ。
「本好きの~」というタイトルの通り、この物語の主人公は本が大好き。小説を読んでいるのに、なんだかこちらまで本が読みたくなってきます。主人公のマインが無類の本好きなので、つい気持ちも感情移入してしまうのかもしれないですね。自由に本が読める、今、自分のいるこの世界って、なんて幸せな世界なんだろうって思っちゃうんですよ。まさに「神が授けし地上の楽園」いやっふう~!という感じですね。
物語の舞台は完全に別世界なんですが、主人公のマインの記憶はこの世界の日本なので、時々現代の記憶を思い出して懐かしんだりします。やっぱり比べますよね。ないものだらけで大変そう。食事の違いにがっかり。やっぱり炊き立てのお米と、焼き魚と、お味噌汁は最高ですね。
読んでいくと3巻あたりで壁にぶつかります。それは名前です。長いんですよね、覚えられないんですよ。「ローゼマイン」はまだいいんですが、「フェルディナンド」「レーゼバンス」「ジルベスター」「ビンデバルド」などなど、聞きなれない言葉が続くので大変です。でもこれもまだ序の口。人名の他にも国名や、神様、役職名、素材などどんどん出てくるし、登場人物もどんどん増えていきます。
ちょっとしんどいけど、読み進めていくうちに不思議と慣れます。どんどん面白くなるので、途中で諦めずにぜひ読み進めてほしいです。
異世界と言えば魔法です。空を飛んだり、攻撃したり、光ったり、転移したり、通常出来ない事が出来るので憧れですよね。最初は魔法が出てこないので、魔法がない世界観かと思ってましたが、ちゃんと後で出てきます。魔力がある世界で、魔法の他にも、魔獣や魔木、鳴き声のする食べ物やものすごい攻撃的なお魚なども出てきます。
世界観も独特です。住む人達の価値観や考え方も別世界なんです。下町の平民は、まだ理解できる感覚ですが、お貴族様と呼ばれる魔力を持った人たちは全く異次元です。そのため主人公のマインは「常識」の差にかなり苦労します。
魔力量で階級が決まるので完全な上下社会。下の者は上の者に逆らえません。また、恋愛も自由意志でなく、家や国を繋ぐため政略結婚がほとんど。位が上がるほど第二夫人や第三夫人を持つのが当たり前です。
また、お貴族様の作法は厳しく、長い袖の服がステイタスでそれを優雅に着こなすのが必須スキル。言葉遣いはもちろん、表情も内心の感情を表す事は、はしたない事とされて見下されます。感情を露見させれるのは隠し部屋のみ。自由奔放に生きることが許されない。優雅だけど、こちらから見るとなんとも窮屈そうな世界です。
一方、魔力を持ってない平民は、かなり原始的な生活をしています。つぎはぎの服を着て、井戸で生活水を部屋に運び、狩りや採集をして生活しています。もちろん言葉遣いも荒く、ケンカは日常茶飯事。でも言葉や態度が乱暴でもみんな仲がよく、貧乏ながらも伸び伸びと暮らしています。
そして平民はお貴族様には逆らうことができません。力の差が歴然。魔力を扱える貴族は平民などいつでも処分できるのです。また、平民の生活する土地は、貴族が魔力を満たす事によって実りを得るため、平民は貴族によって生かされています。貴族は平民を生かしてやっている、という感覚なんですね。なので反逆は絶対に許しません。日用品や食物は平民が作っていいるので、本気で平民がいなくなると貴族も生活できなくなるんですけどね。
ただ、貴族と平民では生活の場所が違うので、普通は接する事はほとんどありません。
平民として生まれたマインは、ひょんなことをきっかけにお貴族様に目を付けられてしまいます。本に関する事には目がありません。周りはいつもヒヤヒヤ。いったいどうなってしまうのかと読んでいる方もドキドキします。
マインの両親は特に子供たちへの愛情が深く、病弱なマインでもとても大切に育てています。ほんとうに命を懸けて守ります。また、マインも最初こそ他人のようで家族と思えなくても、だんだんと家族愛が深まっていきます。かけがえのない大切な人たちとなり、何をおいても家族を守り続けます。
このマイン一家の家族の愛情がやがて、感情がドライな、あるお貴族様の心に深く刺さります。
マインの物語はどのように展開していくのか。また、優雅だけど独特なお貴族様の生活とはどんなものか。ぜひ読んで確かめてみて下さい。
現在31巻まで出ています。5月10日に待望の最終巻が発売です。